2006年生 トランセンド 牡馬

トランセンド完全ガイド|血統・成績・エピソードで辿る生涯

トランセンド






トランセンド完全ガイド|血統・成績・エピソードで辿る生涯


トランセンドとは?【競走馬プロフィール】

トランセンドは、2010・2011年にジャパンカップダートを連覇し、2011年のフェブラリーSを制したダート王者です。
同年春のドバイワールドカップでは世界の舞台で2着に好走し、日本ダートの地力を示しました。
最大の武器は楽に先手を奪うダッシュ力平均ラップのまま押し切る巡航持続力です。
逃げ・番手から主導権を握り、直線は惰性を落とさない粘りで押し切るのが勝ち筋でした。
同時代のスマートファルコンワンダーアキュートフリオーソらと鎬を削り、交流・中央を問わず上位安定。
国内のGI/JpnIは合計4勝(JCD×2・フェブラリーS・南部杯)を数えます。

生年 2006年(日本)
性別・毛色 牡・黒鹿毛
生産 ノーザンファーム(北海道)
調教師 安田隆行(栗東)
通算成績 国内外で重賞多数(GI/JpnI 4勝、海外GI2着1回)
主な勝ち鞍 ジャパンCダート(2010・2011)/フェブラリーS(2011)/マイルCS南部杯(2011)/みやこS(2010)ほか
ワイルドラッシュ(Wild Rush)
シネマスコープ(母父:トニービン





目次





血統背景と特徴

父は米国ダートの名スプリンターワイルドラッシュです。
母はシネマスコープで、母父は名種牡馬トニービンです。
父系の先行スピードと、母系由来の持続力・芯の強さが融合し、楽に好位を確保→全体を締める勝ち筋を獲得しました。
肩の可動域が広く、二の脚でスッと流れに乗れるのが美点です。
トップスピード到達後の惰性の維持が長く、ラップが緩みにくい舞台ほどパフォーマンスが安定します。
距離レンジは1600〜2000mが最良で、左回り・右回りいずれも高水準に対応可能でした。

  • 配合メモ①:父由来の先行力×母父由来の底スタミナ=平均ラップでの押し切り型。
  • 配合メモ②:良〜稍重のフラットなダートがベスト。道悪もこなす許容幅あり。
  • フォーム特性:低い重心で滑るように加速し、コーナーでも速度を落とさない

豆知識:同世代にはエスポワールシチー、少し下にスマートファルコンワンダーアキュートが並び、ダート黄金期の一翼を担いました。





デビュー〜頂点までの道程

3歳春にダート転向後、未勝利→500万→特別→重賞と一気に階段を駆け上がりました。
夏の新潟で1000万下を圧勝し、秋のレパードSで重賞初制覇。
古馬混合の秋競馬では一度足踏みも、冬のアルデバランSで巻き返しました。
4歳春はアンタレスSでつまずくも、秋のみやこSを逃げ切り、ジャパンCダート初GI制覇を達成しました。
翌2011年はフェブラリーSを逃げ切って春のダート王に即位。
続くドバイワールドカップでは世界の強豪相手に堂々の2着と存在感を示しました。
秋はマイルCS南部杯を快勝し、JBCクラシック2着を経て、ジャパンCダート連覇しました。
6歳シーズンは序盤から勝ち切れず、国内外の大舞台で苦戦。
それでも先行力は衰えず、引退まで一線級として走り切りました。

  • 成長曲線:3歳秋〜4歳秋にかけて上昇カーブが急伸。完成の頂点は2010年末〜2011年末。
  • 臨戦過程:叩きつつ上がるタイプ。前哨戦で巡航速度を底上げ→本番で最大化。

エピソード:2011年のドバイワールドカップは日本勢ワンツーの歴史的一戦で、勝ち馬はヴィクトワールピサでした。
国内では先行勢の筆頭として、ペースメイク面でもレースを作る立場が多かった馬です。





競走成績とレース解説

勝ち筋は、スタートで主導権中盤を締めて消耗戦化直線で惰性を維持という一貫設計です。
ハナに立てない時は番手からでも自分のリズムに持ち込み、息の入らない平均戦でライバルの決め手を封じます。
1600mでは先行押し切り、1800〜2000mではコーナーで落とさず回ることで優位を作りました。
道悪は苦にせず、時計が速い馬場でも持続に寄せられるため総合力で対応可能でした。
反面、終いの瞬発力勝負や、ハイプレッシャーで絡まれての早仕掛け強要はリスクでした。

  • 時計面ハイライト:JCD 1:48.9(2010・阪神1800)/JCD 1:50.6(2011・阪神1800)。
    フェブラリーS 1:36.4(2011・東京1600)。
  • 距離レンジ:1600〜2000m◎。1400m◯(地力で克服)。2100m以上はペースメイクが鍵。
  • 戦術の肝:序盤の二の脚で優位を確保し、中盤の谷を作らない運び。

相手関係の物差しは、同時代のスマートファルコン(逃げの総合力)、ワンダーアキュート(長い脚)、フリオーソ(先行持久)ら。
先行争いの主導権を握れた時の強さは歴代でも屈指でした。





名レースBEST5

1位|2011年2月20日 フェブラリーS(GI)東京ダ1600m 良

主導権を握って淡々と運び、直線も惰性切れを見せず完勝。
中央のダート王に相応しい完成度を刻印した一戦でした。

2位|2010年12月5日 ジャパンカップダート(GI)阪神ダ1800m 稍重

初のダートGI制覇。
自ら流れを作って直線も押し切り、先行持続の理想形を表現しました。

3位|2011年12月4日 ジャパンカップダート(GI)阪神ダ1800m 良

危なげない逃げ切りで連覇を達成。
一年を通じて仕上がりの高さと再現性を示しました。

4位|2011年3月26日 ドバイワールドカップ(GI)メイダン ダ2000m

日本勢ワンツーの歴史的決着で2着
世界の舞台で通用する巡航力を証明しました(勝ち馬:ヴィクトワールピサ)。

5位|2011年10月10日 マイルCS南部杯(GI)東京ダ1600m 良

初のマイルGI(JpnI)を先行押し切りで制覇。
距離短縮でも主導権を握れば強いことを再確認させた内容でした。





同世代・ライバル比較

スマートファルコンは逃げの持久力で圧を掛け続けるタイプ。
対してトランセンドテンのダッシュ中盤の締めで主導権を奪うのが得手でした。
ワンダーアキュートには長い脚で迫られるため、直線入口で一馬身の余裕を作るのが対策でした。
フリオーソとは先行同士の力比べで、コーナーの速度維持が勝敗の分岐となりました。
海外ではヴィクトワールピサ、国内では後年のニホンピロアワーズローマンレジェンドが比較軸でした。

ライバル 強み 対策(トランセンド流) 要点
スマートファルコン 逃げの総合力 テンで圧を掛け主導権争いを先に制す JBCでは僅差の名勝負。
ワンダーアキュート 終いのロングスプリント 中盤から締め続け直線入口でリード確保 JCDで封じ込め。
フリオーソ 先行持久・コーナーワーク 3〜4角で速度を落とさず回る 交流重賞で激突多数。
ダノンカモン マイルの瞬発 ペースを緩めず消耗戦化 南部杯で完封。
ニホンピロアワーズ 総合力と安定感 主導権掌握が最重要 2012年以降は相手が上回る。





競走スタイルと得意条件

理想は良〜稍重×平均〜やや速い流れ×1600〜2000mです。
スタートで楽に先手を取り、中盤で谷を作らないまま直線へ。
4角で姿勢を保ったまま加速に移れれば、惰性の上乗せで押し切れます。
道悪はプラスにも働きやすく、時計の出る馬場でも総合力で対応可能でした。
逆に、極端な超スローからの瞬発勝負は割引き。

  • 向く条件:先行有利の馬場、ワンターンのマイル〜1800m、またはコーナー4つの1800〜2000m。
  • 苦手傾向:絡まれての過激なハイラップ、直線だけの瞬発戦。
  • 実戦Tips:二の脚で優位を作り、3角手前で一度小さく息を入れる配分。





引退後(種牡馬)とレガシー

引退後は国内で供用され、ダート短中距離を中心に産駒が地方・中央で堅実に走りました。
父系らしい先行力と、母系の持続力を伝えやすく、交流重賞線での存在感が特徴です。
母の父としてもダート適性の底上げに寄与し得る配合で、今後も地方競馬を中心に息の長い影響を残すと見られます。

  • 配合の示唆:スピード源の強い牝系(ミスプロ系・ストーム系)とのクロスでテンの速さが強化されやすい。
  • レガシー:主導権で勝つ」日本ダートの王道路線を体現した先行総合力の象徴。





成績表

日付 開催 レース名 着順 騎手 距離 馬場 タイム 備考
2009/02/14 2京都5 3歳新馬 2 川田将雅 芝1800 1:51.1 芝で素質示す2着。
2009/04/11 2阪神5 3歳未勝利 1 安藤勝己 ダ1800 1:53.7 ダート転向で初勝利。
2009/04/25 3京都1 3歳500万下 1 安藤勝己 ダ1800 1:49.7 連勝で上のクラスへ。
2009/05/09 3京都5 京都新聞杯(GII) 9 安藤勝己 芝2200 2:14.4 芝重賞で苦戦。
2009/07/26 2新潟4 麒麟山特別(1000万下) 1 内田博幸 ダ1800 1:49.5 古馬相手に快勝。
2009/08/23 3新潟4 レパードS(重賞) 1 松岡正海 ダ1800 1:49.5 重賞初制覇。
2009/09/21 4新潟4 エルムS(GIII) 4 内田博幸 ダ1800 1:51.4 古馬相手に善戦。
2009/11/07 5東京1 武蔵野S(GIII) 6 松岡正海 ダ1600 1:35.9 重賞の壁に直面。
2010/02/13 2京都5 アルデバランS(OP) 1 安藤勝己 ダ1900 1:55.4 再浮上の逃げ切り。
2010/04/25 3京都2 アンタレスS(GIII) 8 安藤勝己 ダ1800 1:50.5 展開噛み合わず。
2010/05/23 4京都2 東海S(GII) 2 藤田伸二 ダ1900 1:55.4 惜しいクビ差。
2010/09/23 船橋 日本テレビ盃(JpnII) 2 藤田伸二 ダ1800 1:49.3 交流で存在感。
2010/11/07 6京都2 みやこS(GIII) 1 藤田伸二 ダ1800 1:49.8 重賞再勝利。
2010/12/05 5阪神2 ジャパンCダート(GI) 1 藤田伸二 ダ1800 1:48.9 GI初制覇。
2011/02/20 1東京8 フェブラリーS(GI) 1 藤田伸二 ダ1600 1:36.4 中央ダート王へ。
2011/03/26 UAE ドバイワールドC(GI) 2 藤田伸二 ダ2000 海外GIで2着(勝ち馬:ヴィクトワールピサ)。
2011/10/10 4東京3 マイルCS南部杯(GI) 1 藤田伸二 ダ1600 1:34.8 JpnIを快勝。
2011/11/03 大井 JBCクラシック(JpnI) 2 藤田伸二 ダ2000 2:02.3 スマートファルコンに0.2差。
2011/12/04 6阪神2 ジャパンCダート(GI) 1 藤田伸二 ダ1800 1:50.6 JCD連覇。
2012/02/19 1東京8 フェブラリーS(GI) 7 藤田伸二 ダ1600 1:36.6 展開合わず。
2012/03/31 UAE ドバイワールドC(GI) 13 藤田伸二 ダ2000 序盤から噛み合わず。
2012/11/05 川崎 JBCクラシック(JpnI) 3 藤田伸二 ダ2100 2:14.1 見せ場十分。
2012/12/02 5阪神2 ジャパンCダート(GI) 16 藤田伸二 ダ1800 1:51.8 直線で失速。
2012/12/29 大井 東京大賞典(GI) 7 藤田伸二 ダ2000 2:08.2 ラストラン。





まとめ

トランセンドは、主導権を握って中盤を締める日本ダート王道の完成形です。
2010・2011年のジャパンCダート連覇、2011年のフェブラリーS制覇、ドバイWC2着で国内外に実力を示しました。
楽に先手→平均ラップで押し切る”教科書的な勝ち筋は、今なお戦術論の基準点です。
引退後も先行総合力を伝える存在として、ダート戦線の厚みを支えています。


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