スマートファルコンとは?【競走馬プロフィール】
スマートファルコンは、交流重賞で19勝(国内最多のJpn格付含む)を挙げた“地方ダートの覇者”です。
逃げ・先行から刻むハイラップの持続で他馬をねじ伏せ、JpnI・GIを計6勝。
2010年のJBCクラシック、東京大賞典、2011年の帝王賞・JBCクラシック・東京大賞典、2012年の川崎記念を制し、ダート中距離の覇権を確立しました。
2012年のドバイワールドカップにも挑戦し、国際舞台で自らのスタイルを貫きました。
引退後は種牡馬として産駒が地方・中央のダートで活躍し、シャマルが2024年にかしわ記念を制して産駒JpnI初制覇を達成するなど、レガシーは拡大中です。
生年月日 | 2005年4月4日(日本) |
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性別・毛色 | 牡・栗毛 |
生産 | 岡田スタッド(北海道・静内) |
調教師 | 小崎憲(栗東) |
馬主 | 大川徹 |
通算成績 | 41戦23勝 |
主な勝ち鞍 | JBCクラシック 2010・2011/東京大賞典 2010・2011/帝王賞 2011/川崎記念 2012 ほか |
受賞 | NARグランプリ年度表彰(2010・2011)ほか |
父 | ゴールドアリュール |
母 | ケイシュウハーブ(母父:ミシシッピアン) |
目次
馬名は青マーカー、戦術や適性などの重要語句は赤マーカーで強調します。
血統背景と特徴
父は日本ダート史に残る名種牡馬ゴールドアリュールです。
母はケイシュウハーブで、母父は米国血統のミシシッピアンです。
父からはダートでの先行持久力と好発のセンスを、母系からはしぶとさとコーナーワークの器用さを継承しました。
半兄にワールドクリーク(東京大賞典)がいる牝系で、ダート中距離に強い資質が濃い一族です。
心肺機能に秀で、“逃げて上がりも速い”という希少な総合力が最大の武器でした。
ベストは1800〜2100m帯。
小回りでも姿勢を保ったままコーナーを回れるため、地方の砂厚い馬場での減速幅が小さく、一定ラップを刻む展開で終始優位を取り続けられました。
- 配合メモ①:父系の先行力×母系の粘着力=先行押し切りの最適解。
- 配合メモ②:砂厚・小回りの地方コースで許容幅が広く、良〜不良まで再現性が高い。
- フォーム特性:前駆の踏み出しが鋭く、二枚腰でラスト1Fも落ちにくい。
豆知識:馬名は冠名「スマート」+英語の“Falcon(隼)”の合成です。
地方のスタンドを熱狂させた先行連勝で、交流戦線の人気を底上げしました。
デビュー〜頂点までの道程
2歳10月、ダート1600mの新馬戦を快勝して素質を開示しました。
3歳春は芝重賞へ挑み経験値を積んだのち、夏以降にダートへ軸足を完全移行しました。
同年のジャパンダートダービーはサクセスブロッケンの2着と健闘し、適性の天井が大舞台級であることを示しました。
4〜5歳時は短距離寄りの交流重賞を押し切って地力を底上げし、6歳の2010年秋にJBCクラシック、続く年末の東京大賞典を完勝。
7歳の2011年は帝王賞・JBCクラシック・東京大賞典を一気に制して最強評価を確立しました。
8歳序盤は川崎記念を圧勝し、同年春のドバイワールドカップに遠征。
異国の舞台では苦杯をなめましたが、国内では“自分の競馬”を貫いた歴戦の王者でした。
- 成長曲線:完成は遅めだが、5〜7歳で絶対値のピークを形成。
- 臨戦過程:叩きつつ上昇するタイプで、前哨戦で巡航速度を底上げして本番へ。
エピソード:逃げても折り合いに難がないメンタルが強み。
砂を被らない形で先手を奪えば、“止まらない平均”を維持して直線まで押し切るのが王道パターンでした。
競走成績とレース解説
勝ち筋は、主導権を奪う→中盤でラップの谷を作らない→直線で二枚腰という逃げ〜先行の王道設計です。
砂厚い地方コースでは惰性のロスが小さく、等速に近い巡航で押し切る形が理想。
ペースを上げ下げせず一定に保つことで後続の脚を削り、自分の土俵に引き込みます。
良馬場はもちろん、不良でも前半から推進力を乗せられるため、時計の速い決着でも耐性が高いタイプでした。
- 時計面ハイライト:東京大賞典2:00.4(2010・ダ2000)。
帝王賞2:01.1(2011・ダ2000)。 - 距離レンジ:1800〜2100m◎。1400m◯/2400m◯。
- 戦術の肝:隊列が整う前に主導権を確保し、“止まらない平均”で押し切る。
相手関係の物差しは、同時期にしのぎを削ったフリオーソ、エスポワールシチー、そして中央ダートの雄トランセンドです。
いずれも対先行勢に強い実力馬でしたが、主導権×巡航の設計で正面から受け止めて勝ち切りました。
名レースBEST5
1位|2011年6月29日 帝王賞(JpnI)大井 ダ2000 良
序盤から主導権を取り、ラストまで等速巡航のまま後続を完封。
時計2:01.1の圧勝は、持続力の到達点を示す代表作でした。
2位|2011年12月29日 東京大賞典(GI)大井 ダ2000 良
年末の大一番を逃げ切りで連覇。
中盤で谷を作らず、直線は二枚腰で押し通して強豪を完封しました。
3位|2011年11月3日 JBCクラシック(JpnI)大井 ダ2000 良
中央の砂王者トランセンドを正攻法で抑え込む完勝。
地方最強の矜持を示した価値ある一戦でした。
4位|2010年12月29日 東京大賞典(GI)大井 ダ2000 良
2:00.4の快速決着を逃げ切り。
小回り適性と巡航速度の高さを可視化した“新時代の砂時計”でした。
5位|2012年1月25日 川崎記念(JpnI)川崎 ダ2100 不良
重馬場をものともせずハナからワンサイド。
悪条件でも崩れない設計を証明しました。
同世代・ライバル比較
逃げ〜先行で強烈だったフリオーソ、中央JRAの王者エスポワールシチー、同型で総合力の高いトランセンドなどが比較軸でした。
いずれもハイレベルな先行系ですが、“主導権の質”とラップの平坦性で上回った時に差し切れました。
ライバル | 強み | 対策(スマファル流) | 要点 |
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フリオーソ | 先行持久・地力 | 中盤を締めて脚比べ | 東京大賞典で撃破。 |
エスポワールシチー | 早い巡航と持久 | ハナを譲らず主導権 | 帝王賞で完勝。 |
トランセンド | 中央の総合力 | 4角前で圧を継続 | JBCで正面突破。 |
競走スタイルと得意条件
理想は砂厚い地方コース×良〜重×1800〜2100mです。
序盤で主導権を確保し、中盤のラップを落とさないことで後続の脚を削ります。
4角では姿勢を保ったまま直線へ入り、ラスト1Fまで等速感を維持できれば勝ちパターン。
極端な瞬発一点勝負より、全体の持久が問われる流れで真価を発揮しました。
- 向く条件:小回り・コーナー4つ、ダ2000m前後、ややタイトなペース。
- リスク:超スローの直線競馬、砂を被る受け身の展開。
- 実戦Tips:二の脚でハナへ。“止まらない平均”で勝負。
引退後(種牡馬)とレガシー
引退後は北海道・日高のレックススタッドで供用開始。
豊富な交流重賞実績に裏打ちされた先行持久力の伝達力が評価され、地方・中央のダートで産駒が台頭しています。
代表産駒には、中央重賞2勝のオーヴェルニュ(東海S・平安S)や、JpnIのかしわ記念と黒船賞連覇のシャマルなどがいます。
“主導権×巡航”の設計を多くの産駒が受け継ぎ、距離適性1800〜2000m帯で高い再現性を示しています。
- 配合の示唆:スピードのある牝系と好相性。
先行して楽に息が入る配合で持久力を底上げ。 - レガシー:“地方×中距離”という日本固有の一大市場で、勝ち切る設計を遺した功労馬。
成績表
日付 | 開催 | レース名 | 着順 | 騎手 | 距離 | 馬場 | タイム | 備考 |
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2007/10/28 | 4東京9 | 2歳新馬 | 1 | 岩田康誠 | ダ1600 | 重 | 1:39.1 | 新馬勝ちで素質開示。 |
2007/11/25 | 5東京8 | 2歳500万下 | 2 | 岩田康誠 | ダ1600 | 良 | 1:39.1 | スピード上位。 |
2007/12/16 | 5中山6 | 2歳500万下 | 1 | 後藤浩輝 | ダ1800 | 良 | 1:55.6 | 距離延長で快勝。 |
2008/01/06 | 1中山2 | ジュニアC(OP) | 1 | 横山典弘 | 芝1600 | 良 | 1:34.1 | 芝でオープン勝ち。 |
2008/02/11 | 1東京4 | 共同通信杯(GIII) | 7 | 横山典弘 | 芝1800 | 良 | 1:48.5 | 芝重賞で善戦。 |
2008/03/01 | 1阪神1 | アーリントンC(GIII) | 10 | 池添謙一 | 芝1600 | 良 | 1:35.7 | 芝路線から転換。 |
2008/04/20 | 3中山8 | 皐月賞(GI) | 18 | 福永祐一 | 芝2000 | 良 | 2:04.1 | 芝で試金石。 |
2008/07/09 | 大井 | ジャパンダートダービー(JpnI) | 2 | 岩田康誠 | ダ2000 | 不 | 2:05.1 | サクセスブロッケンに次ぐ2着。 |
2008/08/10 | 2小倉8 | KBC杯(OP) | 1 | 岩田康誠 | ダ1700 | 良 | 1:43.6 | 先行押し切り。 |
2008/10/07 | 金沢 | 白山大賞典(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ2100 | 重 | 2:14.1 | 交流重賞初V。 |
2008/11/03 | 園田 | JBCスプリント(JpnI) | 2 | 岩田康誠 | ダ1400 | 良 | 1:25.8 | 短距離でも対応。 |
2008/11/26 | 浦和 | 彩の国浦和記念(JpnII) | 1 | 岩田康誠 | ダ2000 | 重 | 2:04.8 | 先行楽勝。 |
2008/12/25 | 園田 | 兵庫ゴールドトロフィ(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1400 | 稍 | 1:26.5 | 差して完勝。 |
2009/02/11 | 佐賀 | 佐賀記念(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ2000 | 良 | 2:07.4 | 逃げ切り。 |
2009/03/25 | 名古屋 | 名古屋大賞典(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1900 | 良 | 2:01.8 | 完勝で連勝。 |
2009/05/04 | 名古屋 | かきつばた記念(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1400 | 良 | 1:25.5 | 先手で押し切り。 |
2009/05/27 | 浦和 | さきたま杯(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1400 | 良 | 1:26.4 | 短距離で強さ維持。 |
2009/07/20 | 盛岡 | マーキュリーC(JpnIII) | 2 | 岩田康誠 | ダ2000 | 良 | 2:04.6 | 中距離で善戦。 |
2009/08/13 | 門別 | ブリーダーズゴールド(JpnII) | 1 | 岩田康誠 | ダ2000 | 重 | 2:02.2 | 重馬場も圧勝。 |
2009/11/25 | 浦和 | 浦和記念(JpnII) | 7 | 岩田康誠 | ダ2000 | 重 | 2:10.0 | 不利響き凡走。 |
2010/05/03 | 名古屋 | かきつばた記念(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1400 | 良 | 1:25.3 | 楽逃げ押し切り。 |
2010/05/26 | 浦和 | さきたま杯(JpnIII) | 1 | 岩田康誠 | ダ1400 | 稍 | 1:26.2 | 完勝で短距離制圧。 |
2010/06/30 | 大井 | 帝王賞(JpnI) | 6 | 岩田康誠 | ダ2000 | 稍 | 2:04.8 | 叩いて秋へ。 |
2010/09/23 | 船橋 | 日本テレビ盃(JpnII) | 3 | 武豊 | ダ1800 | 稍 | 1:49.3 | 乗り替わりで前進。 |
2010/11/03 | 船橋 | JBCクラシック(JpnI) | 1 | 武豊 | ダ1800 | 良 | 1:49.9 | 圧逃でJpnI初制覇。 |
2010/11/24 | 浦和 | 浦和記念(JpnII) | 1 | 武豊 | ダ2000 | 稍 | 2:05.8 | 先行楽勝。 |
2010/12/29 | 大井 | 東京大賞典(GI) | 1 | 武豊 | ダ2000 | 良 | 2:00.4 | 快速決着で圧勝。 |
2011/05/02 | 船橋 | ダイオライト記念(JpnII) | 1 | 武豊 | ダ2400 | 良 | 2:33.2 | 距離延長も完封。 |
2011/06/29 | 大井 | 帝王賞(JpnI) | 1 | 武豊 | ダ2000 | 良 | 2:01.1 | 持続力の極致。 |
2011/09/23 | 船橋 | 日本テレビ盃(JpnII) | 1 | 武豊 | ダ1800 | 重 | 1:50.6 | 楽逃げ押し切り。 |
2011/11/03 | 大井 | JBCクラシック(JpnI) | 1 | 武豊 | ダ2000 | 良 | 2:02.1 | トランセンド撃破。 |
2011/12/29 | 大井 | 東京大賞典(GI) | 1 | 武豊 | ダ2000 | 良 | 2:01.8 | 年末グランプリ連覇。 |
2012/01/25 | 川崎 | 川崎記念(JpnI) | 1 | 武豊 | ダ2100 | 不 | 2:10.7 | 不良も危なげなし。 |
2012/03/31 | ドバイ | ドバイワールドC(GI) | 10 | 武豊 | ダ2000 | 良 | - | 海外挑戦で健闘。 |
まとめ
スマートファルコンは、主導権×巡航で押し切るダート中距離の理想解を体現した名馬です。
交流重賞で19勝、うちJpnI・GIを6勝という金字塔を打ち立て、地方ダートの熱狂を牽引しました。
引退後はレックススタッドで後継世代を送り出し、シャマルのJpnI制覇などレガシーは前進中です。
“止まらない平均”という勝ち筋は、今なおダート戦術の教科書として語り継がれています。